
ERC-7715とは?毎回の署名をなくす仮想通貨の新標準
仮想通貨やNFTの取引、DeFiの運用は急速に一般ユーザーに広がりつつあります。しかし、こうしたサービスを実際に使ってみると、便利さの一方で手間も多いことに気づきます。トランザクションを行うたびにウォレットを開いて確認し、署名を繰り返すのは、多くの人にとって負担となります。
この「毎回の署名が面倒」という課題を解決するために生まれたのが、イーサリアムの新しい技術標準「ERC-7715」です。この記事では、ERC-7715の仕組みや特徴、使い道、今後の可能性について、詳しく解説していきます。
ERC-7715とは?
ERC-7715は、ウォレットがあらかじめ条件付きでDAppに特定の操作を許可できる標準規格です。2024年に提案され、仮想通貨の取引やサービス利用をよりスムーズにすることを目的としています。
簡単にいうと、ユーザーが「このDAppにこれだけの範囲で操作を許可する」と事前に設定しておくことで、何度も署名をする必要がなくなります。しかも、その権限は厳密に条件をつけられるため、許可した範囲を超えることはできません。
- ウォレットが事前に権限を発行する
- 条件内のトランザクションは自動的に実行可能
- 条件外の操作はブロックされる
- いつでも権限を取り消せる
従来は都度承認が必要だったため、定期購入や予約注文などで大きなハードルがありましたが、ERC-7715はこの「承認の煩雑さ」を解消します。
これまでの課題
仮想通貨やブロックチェーンは、自由で分散化された技術です。しかし、技術的な自由度が高いほど、ユーザーが一つ一つ操作を確認する必要も増えます。結果として、次のような問題が生じます。
- 毎月の支払いを自動化できず、毎回手動承認が必要
- DeFiでの自動積立や定期スワップが実現しにくい
- ゲーム内決済がスムーズに完了しない
ERC-7715はこれらを解決し、Web2のようなスムーズな体験をブロックチェーン上で再現するために設計されています。
仕組みの基本
ERC-7715では「wallet_grantPermissions」というメソッドを用いて、DAppがウォレットに権限を申請します。ユーザーはその申請内容を確認し、許可する場合は条件を設定して承認します。
たとえば次のように設定できます。
- 許可する操作の種類(送金、スワップ、NFT送付)
- 送金額や利用頻度の上限
- 有効期限(日数や回数)
- 操作対象のアドレス
このように細かく条件を設定できるため、安心して自動化を任せることができます。条件を超える操作は自動的に拒否されるため、リスクは限定的です。
他の技術との連携
ERC-7715は、イーサリアムの他の技術標準と組み合わせることでさらに強力になります。
- ERC-4337:アカウントアブストラクションを活用し、スマートコントラクトウォレットを柔軟に運用できる
- ERC-7710:スマートコントラクト同士の権限委任を定める仕組みと組み合わせられる
活用事例の詳細
ERC-7715の最大の魅力は、利用シーンの幅広さです。以下に具体的な活用事例を紹介します。
定期積立購入
毎週、指定した額のUSDCを自動でETHに交換する設定を行うと、手動承認なしに継続的な積立が可能になります。
サブスクリプション支払い
月額のサービス利用料を自動で支払う権限を与えることで、毎月の操作が不要になります。NetflixやSpotifyのような体験をブロックチェーン上で実現できます。
ゲーム内アイテムの即時購入
ゲームアプリでのアイテム購入をリアルタイム決済できるため、プレイの流れを止めずに取引を完了させられます。
マーケットでの自動入札
マーケットに参加するとき、指定条件の範囲内で自動入札が行えるため、入札チャンスを逃さなくなります。
DeFiの定期運用
特定のレンディングプロトコルに毎月一定額を入金し、利回り運用する仕組みを自動化できます。
セキュリティ面の工夫
ERC-7715では以下のセキュリティ対策が導入されています。
- ユーザーが自分で条件を厳格に設定
- 上限金額や期限を必ず設定できる
- 条件を超える操作はウォレットが拒否
- 別のスマートコントラクトアカウントに権限を分離できる
- 必要に応じてメインウォレットと資金を分けて運用可能
- いつでも権限を取り消せる
- ウォレットアプリで権限状況を確認可能
この仕組みのおかげで、利便性を損なわずにリスクを限定できます。特にスマートアカウントを利用する運用では、万一不正が起きても本体ウォレットの資産を保護しやすくなります。
まとめ
ERC-7715は仮想通貨をより便利で身近にするための重要な技術です。これまでのように都度署名を求められる煩雑さから解放され、条件を設定すれば安心して自動化を利用できます。今後ますます多くのウォレットやサービスが対応することで、仮想通貨はWeb2に負けない快適なユーザー体験を提供できるようになるでしょう。
もしこれから仮想通貨サービスを利用するのであれば、ERC-7715対応かどうかを一つの選択基準にしてみてください。便利さと安全性を両立した新しい体験が待っています。